誠-巡る時、幕末の鐘-
「……あら、察しのいい事で。もうばれましたか」
蜜緒は口調とは真逆に全く驚いていない。
「どういうつもり??奏のことは本当とは思えないね。ここはあんたの術中でしょ??こんなものにまんまとかかるなんて…」
「こんなものとは随分なおっしゃりようですね。あなた様が何やらえらく悩んでいらしたから、手伝って差し上げようと思っただけですのに」
「手伝う??」
蜜緒は少し珠樹に近づいた。
珠樹は訝しげにはしたが、再び距離を広げることはしなかった。
「愛しい愛しい方をご自分の手中に収めたい。そう思っていらっしゃるご様子」
「……女狐が」
「そしてそのお方はあなたの妹君であらせられる」
「いい加減に……」
珠樹は蜜緒の話しをやめさせようとした。
だが、続く言葉に二の句が告げなくなった。
「あのお方にはもう好いたお方がいらっしゃいますよ」
「………」
珠樹が何も言わないのを見て、蜜緒はゆっくりと口の端を上げた。