誠-巡る時、幕末の鐘-
敵のもくろみ
―――所変わり
小さな小窓から、紅い夕日が部屋を照らしていた。
小さな部屋だ。
夕日の紅とは違う紅も部屋にはあった。
「…………ここは」
部屋の奥に寝かせられていた奏は目を覚ました。
辺りのものは当然ながら見慣れず、不愉快極まりない。
「この着物……」
奏が着ていたのは、今まで着ていた男物の着物ではなく、紅い女物の豪華な装束だった。
世に言う十二単を簡略化したものだろうか。
それでも五枚は羽織っている。
冬なので丁度よかったのだろう。
「………動きづらいし、身体だるい」
奏の悩みは枚数よりも動きにくさだった。
頭もまだぼうっとしている。
「何があったんだっけ??」
まだ上手く働かない頭を無理矢理動かした。