誠-巡る時、幕末の鐘-



奏は勢いをつけ、回し蹴りの要領で壁を壊そうとした。


しかし……。




「…な゙ぁぁぁぁぁっ!!!」




壁はびくともしなかった。


それどころか衝撃がもろに足にきた。


奏は足を押さえ、のたうち回った。




「……もう帰りたい。何で体術までー!!??」




体術まで使えないとなると八方塞がりだ。


人間の女と本当に変わらなくなってしまった。




「……………」




奏は考えた。


何故こういう事態に陥ったのか。


こんな最悪な状況で最悪な状態だ。




「…………あーーーっ!!あの時!!」




斎藤を助けた時に傷を負った。


もしその時の刀が……鬼切ならば。


もし鬼切を盗んだ男が……狐に鬼切を渡していたら。


あの時の者達が……狐の息がかかった者達ならば。




「全部話がつく。……ふっ、あいつら屯所に戻ったら覚えてろ」




奏は拳を握りしめ、低く笑った。


夕日が地平線の向こうに沈み、闇夜の帳が下りた。



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