誠-巡る時、幕末の鐘-
「さすがは天照大御神の末裔。器が違うな」
澪ちゃんは立ち上がり、自分の体をぺたぺたと触った。
一通り触り終えると、満足げな表情を浮かべた。
「あなたは貴船の……」
近藤の言葉にニヤリと笑う。
澪ちゃんならば絶対にしない笑みだ。
「あまり長居はできぬから単刀直入に言う。奏は確かに貴船にいる。迎えにきてやれ」
「貴船のどこに!!?」
「中腹辺りから参道を少し離れた所に屋敷がある。そこにいる」
沖田や珠樹は聞いた途端、立ち上がり、屯所を出ようとした。
「待て。話しはまだ終わりではない」
開かない襖に、出させる気がないことを知り、二人は振り向いた。
「相手は人であって人ではない。気を付けろ。対処の仕方を誤れば取り返しのつかないことになる」
澪ちゃんの体に入った貴船の祭神は意味深に言葉を発した。
神が放つ言葉には必ず意味がある。
ささいな言葉のようであっても、後から振り返るとあぁこの事だったかと思う。
だから決して聞き逃してもいけないし、軽んじてもいけない。
……………決して。