誠-巡る時、幕末の鐘-



「さすがは天照大御神の末裔。器が違うな」




澪ちゃんは立ち上がり、自分の体をぺたぺたと触った。


一通り触り終えると、満足げな表情を浮かべた。




「あなたは貴船の……」




近藤の言葉にニヤリと笑う。


澪ちゃんならば絶対にしない笑みだ。




「あまり長居はできぬから単刀直入に言う。奏は確かに貴船にいる。迎えにきてやれ」


「貴船のどこに!!?」


「中腹辺りから参道を少し離れた所に屋敷がある。そこにいる」




沖田や珠樹は聞いた途端、立ち上がり、屯所を出ようとした。




「待て。話しはまだ終わりではない」




開かない襖に、出させる気がないことを知り、二人は振り向いた。




「相手は人であって人ではない。気を付けろ。対処の仕方を誤れば取り返しのつかないことになる」




澪ちゃんの体に入った貴船の祭神は意味深に言葉を発した。


神が放つ言葉には必ず意味がある。


ささいな言葉のようであっても、後から振り返るとあぁこの事だったかと思う。



だから決して聞き逃してもいけないし、軽んじてもいけない。


……………決して。



< 827 / 972 >

この作品をシェア

pagetop