誠-巡る時、幕末の鐘-



「………う、ん」




山南に預けられていた澪ちゃんが身じろぎし、目をぱちっと開けた。


キョロキョロと辺りを見回し、悲しげな顔つきを浮かべた。




「目が覚めたみたいですね」


「みんなは雷焔君を迎えにいったよ」


「大丈夫だ。必ず帰ってくるから」




山南、井上、松原が順繰りに声をかけるが、その表情は消えなかった。




「どうしたんです??」




ナルが澪ちゃんに優しく話しかけた。




「……かなで、かえってくるけどかえってこない」


「どういう意味だ??」




鈴も訳が分からないという風だ。




「………すみませんが澪ちゃんをお願いします。私も行かなければいけない気がしてきたので」


「あぁ、分かった」




ナルも屯所から姿を消した。




………神の言葉は絶対。


その末裔の言葉もそれに準じる。


……皆は後に思う。


何故あの時、千早が答えを出すまで待つ、あるいは答えを共に考えるくらいしなかったのかと。


後悔は山のように高く、海のように深く襲うことになるとは……まだみんな知り得なかった。



< 829 / 972 >

この作品をシェア

pagetop