誠-巡る時、幕末の鐘-
「………う、ん」
山南に預けられていた澪ちゃんが身じろぎし、目をぱちっと開けた。
キョロキョロと辺りを見回し、悲しげな顔つきを浮かべた。
「目が覚めたみたいですね」
「みんなは雷焔君を迎えにいったよ」
「大丈夫だ。必ず帰ってくるから」
山南、井上、松原が順繰りに声をかけるが、その表情は消えなかった。
「どうしたんです??」
ナルが澪ちゃんに優しく話しかけた。
「……かなで、かえってくるけどかえってこない」
「どういう意味だ??」
鈴も訳が分からないという風だ。
「………すみませんが澪ちゃんをお願いします。私も行かなければいけない気がしてきたので」
「あぁ、分かった」
ナルも屯所から姿を消した。
………神の言葉は絶対。
その末裔の言葉もそれに準じる。
……皆は後に思う。
何故あの時、千早が答えを出すまで待つ、あるいは答えを共に考えるくらいしなかったのかと。
後悔は山のように高く、海のように深く襲うことになるとは……まだみんな知り得なかった。