誠-巡る時、幕末の鐘-
「摂関家時代へ戻したいなら戻せばいい。私には関係ない。……私を捕らえてどうするつもりだ??」
奏は顔をそらしたまま呟いた。
「いいでしょう。教えて差し上げます。私が狐憑きであることはご承知の通りです」
「やはりな」
「鬼の力は強力ですからね。狐達にはあなたを捕らえていた方が色々と都合がいいようで。…私の場合は帝へご助言頂きたいのです。再び公家の世を迎えるようにと」
笑顔で次々と発せられる言葉に、奏は眉をひそめた。
狐の目的はまだ分からないが、この男は自らの私利私欲のために動いている。
まこと、人とは欲にこれほどまでに忠実か。
人外のモノ達と手を組んでまでの価値がこの世での栄華を手にすることにあるのかどうか。
「…………哀れだな」
「……何がです??」
忠興は奏の言葉に笑みを崩した。
奏はやっと忠興の方を見た。
顔にできた影が妖艶な美しさを醸し出しており、忠興はおもわず息を呑んだ。