誠-巡る時、幕末の鐘-
しばらく走ると、急に桜花が道をそれ、林の中に入っていった。
「どうやら場所が分かってるみたいだね」
「おめぇら、油断すんじゃねぇぞ」
「分かってるって!!」
みんなは桜花が場所を知っていると確信し、後についていくことにした。
桜花はわき目も振らず、一目散にどこかへ向かっている。
小さな猫といえど、動きはすばしっこく、追うのは大変だ。
しばらくすると市中の公家の邸宅までとはいかないが、立派な屋敷が見えてきた。
がぜんみんなの走る速さも増した。
「あそこか!!」
「みたいだな!!」
急に桜花が立ち止まり、土方の足元に体をすり寄せた。
「どうした??」
「ニャア」
一声鳴くと、土方から離れ、来た道を引き返していった。
これ以上は自分は行けないという風に寂しい鳴き声だった気がした。
しばしの間、土方は桜花が消えた方を見やっていた。
「土方さん、行こうぜ」
「あぁ」
藤堂に促され、土方も屋敷の方へ足を向けた。