誠-巡る時、幕末の鐘-



屋敷は遠くから見るだけでも広そうだったのに、近くで見るとさらに広く見えた。


このどこかに奏がいる。


はやる気持ちをそのままに珠樹は門に手をかけた。


すると、ばちっと火花が散り、珠樹はさっと手を引いた。




「結界。しかも結構強い」


「どうするの??」


「やっと追い付いたみたいですね。みなさん足がお速い」




一番後ろにいた原田のさらに後ろから聞き慣れた声がした。




「結界ですか。では失礼して。………あぁそうそう。奏にはこの事黙っておいて頂けると嬉しいんですが」




息を乱すことなく現れたナルが門の前に立ち、みんなを振り返った。


そしてそのまま腰の刀に手をかける。


そういえば、ナルが帯刀しているのを見るのは初めてだ。




「危ないので少し下がっていてくださいね」




みんなが下がったのを確認し、ナルが前を向いた次の瞬間、門はすでになかった。


ただ一迅の風が吹いただけだ。



< 835 / 972 >

この作品をシェア

pagetop