誠-巡る時、幕末の鐘-
屋敷は遠くから見るだけでも広そうだったのに、近くで見るとさらに広く見えた。
このどこかに奏がいる。
はやる気持ちをそのままに珠樹は門に手をかけた。
すると、ばちっと火花が散り、珠樹はさっと手を引いた。
「結界。しかも結構強い」
「どうするの??」
「やっと追い付いたみたいですね。みなさん足がお速い」
一番後ろにいた原田のさらに後ろから聞き慣れた声がした。
「結界ですか。では失礼して。………あぁそうそう。奏にはこの事黙っておいて頂けると嬉しいんですが」
息を乱すことなく現れたナルが門の前に立ち、みんなを振り返った。
そしてそのまま腰の刀に手をかける。
そういえば、ナルが帯刀しているのを見るのは初めてだ。
「危ないので少し下がっていてくださいね」
みんなが下がったのを確認し、ナルが前を向いた次の瞬間、門はすでになかった。
ただ一迅の風が吹いただけだ。