誠-巡る時、幕末の鐘-
「彼を許すつもりはありません。でも二人が手を下す必要もない」
奏は異論は許さないとばかりにきっぱりと言った。
「………馬鹿げてる」
「奏ちゃんはお人好しだよ」
二人は渋々刀を引いた。
だが、納めることはしない。
「お人好しなんかじゃありませんよ。人間は嫌いですからね」
「奏」
「奏ちゃん……」
浮かべる表情は千差万別だ。
歓喜の表情、苦悶の表情、悲しみの表情。
立場が異なるのだから当たり前だろう。
「土方さん、捕縛した奴らまだ屯所にいます??」
「あぁ」
「ナル、力が戻らない。たぶんあの時斬られた刀が鬼切だと思う」
「何だって!?本当なの!?奏!!」
みんなは奏の言葉に耳を疑った。
その中でも異常に反応したのは珠樹だった。
あんなに近くにあったのに気がつかなかった。
奏も珠樹も鈴でさえも。
己を無にしてしまえる物が目と鼻の先にあったのだ。
そしておそらくそのせいで奏は今、力を失っている。