誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏、大丈夫??」
「うん」
彼方は奏の頭を優しく撫でた。
温かい手に、奏も嬉しそうににこりと笑った。
「狐はどこだ??奏様に対して牙を剥いたこと、後悔させなければ」
「知らないですよ。彼らはいつも側に張りついているわけではないですから」
「ふざけないでよ。憑きモノが主から離れるわけ……」
ない、という珠樹の言葉は宙に消えた。
「響は!!?」
奏は土方の方をばっと振り返った。
先程までの比ではないくらいの焦りが生まれていた。
「響は近藤さん達と屯所に……おい、まさか」
「狐は頭がいいです。より効率的、合理的にコトを進めようとしますから」
「鬼切は、男達から没収した刀は今どこに!!?」
「……一ヶ所に纏めて屯所の中だ」
「っ!!!土方さん、刀借りますよ!!」
奏は土方の持っていた刀を奪いとると、ひきずるように長い緋袴をくるぶしの辺りで切った。
「ありがとうございました!!」
土方に刀を返し、部屋を急いで出た。
向かうは屯所。
爺も血相を変えて後を追った。