誠-巡る時、幕末の鐘-
庭に面した廊下から庭に出ると、急に奏は立ち止まった。
「奏??どうしたんだよ、早く行かねぇと……」
後からやってきた土方達が見たのは、ぐったりとした響を抱いた鈴の姿だった。
「響!!?どうしたんだよ!!?」
「まさかもう襲われたのか!!?」
「あぁ。すまねぇ。なんとか逃げてきた」
藤堂と永倉が鈴の方へ走り寄ろうと駆け出した。
が、奏が伸ばした手によって止められた。
「お前ら、本当に本物か??」
「気に食わないね。……響は狐臭い匂いなどしないよ」
「それに鈴は敵から逃げたりしない。我ら鬼は背中に守ると決めた者がいる限り退くことなどないからね」
「私の娘に化けるなど千年早いですね」
鈴、いや鈴の姿をした別の者はニーッと笑った。
ぽんぽんぽんと音を立てて、赤い炎がいくつも宙に浮いた。
闇夜を照らすその提灯のような炎は狐火だ。