誠-巡る時、幕末の鐘-
「やはりバレてしまいましたねぇ。蜜緒、もういいですよ」
「はい、時雨(シグレ)様」
ゆらりと二人の姿が揺らめいたかと思うと、二人の姿は別の男女のものへ変わっていた。
いや、戻ってきたというべきか。
「相手が狐だってこと忘れてたぜ」
「あぁ。俺ってばすっかり騙されちまった」
駆け寄ろうとした永倉と藤堂は悔しそうに顔を歪めた。
「……お前達の狙いは何だ??」
「狙いかい??私にはね願い事があるのさね」
どこか遊廓なまりがある男は薄く笑ったまま目を細めた。
その顔はやはり狐を彷彿とさせている。
「願い事だと??合理的を好むお前達がこのような手のこんだことをしてか??」
奏は納得がいかない、と男を訝しげに見た。
最初から最後まで狐達の狙いが見えてこなかった。
それが今、ようやく明らかになろうとしている。