誠-巡る時、幕末の鐘-
「何がおかしいもんかね。鬼も人間も争っている。狐とて不思議ではないさね」
「潮様を引きずり下ろして次は自分の番だと??」
「正解だねぇ」
時雨は細くなった目をさらに細くした。
「憑きモノと憑き主は似るのかねぇ??似たようなこと願って。……残念だったね、二度とそんな世はこないよ」
「それはどうだろうねぇ」
時雨の言葉を聞き、蜜緒が二回手を打った。
ザッと音がして、たくさんの男が現れた。
手には刀やら槍やらが握られている。
「雷焔奏さん、あなたには逃げられたくないんだねぇ。手中に収めておかなきゃ」
「囲まれちまった!!」
「何人いやがるんだ!!?」
次々と現れる男達。
明らかに人数は向こうの方が勝っている。
シュッ!!
「うおっ!!」
忠興の手を後ろで押さえていた原田に向かって、男が刀を振り下ろした。
ちょうど忠興の手を握っている部分を狙っていた。
間一髪で避けたが、忠興を自由にしてしまった。