誠-巡る時、幕末の鐘-
「ありがとうございます。助けて頂いて」
「なに、構わないさね」
忠興は時雨の元へ足を進めた。
時雨は笑顔で忠興を迎える。
「……………あんたはもう用済みだからねぇ」
ザシュッ!!
赤い血が庭に流れた。
ドサッと忠興の体が地面に倒れた。
体を引きずり、時雨の足を掴む。
「な、ぜ、うらぎ……」
「裏切る??人聞きの悪いねぇ。必要なくなったものを切り捨てるのは当たり前のことさね。餌としては十分な仕事ぶりだったんだけど、捕まるようなヘマをしてしまったのはねぇ…」
「………そ、んな……」
忠興はそう言った後、再び口を開くことも動くこともなかった。
近衛忠興という一人の男は狐の手の平で踊らされて命果てた。
最後まで摂関時代での栄華を手にすることを夢見て。