誠-巡る時、幕末の鐘-
「爺。爺は屯所に戻って。響達が心配だから」
「では奏様も一緒に戻りましょう」
「いや、私は……」
「奏、刀を見つけてきましたよ」
「でかした!!」
奏はナルが投げてきた刀を手を伸ばして受け取った。
刀さえ戻れば後はこっちのもの。
狐に鬼が負けてなるものか。
借りは何倍にして返せってレオン様は言ってたっけなぁ??
奏はにやりと意地の悪い笑みを浮かべた。
「ほら、早く。力と体術は使えないけどね」
シュッ!!
ドサッ!!
「……剣術は十分使える」
奏は手近にいた数体をまとめて横に薙払った。
狐達は呻き声をあげることもなく地に伏すことになった。
確かに奏の剣術の腕は落ちていない。
刀についた血を振り払い、また新たに刀を振るった。
「早く!!」
「……御意」
刀を納めて、爺は屋敷の門へと走った。