誠-巡る時、幕末の鐘-
「お綺麗ですね、雷焔の姫君は。凛とした美しさを持ってらっしゃる」
蜜緒は十分な間合いをとり、目線を上げた。
その瞳にはかすかに羨望の眼差しを帯びていた。
「私が今、彼女を手に入れたら、時雨様は私を……」
「よそ見してる場合じゃないよ」
キンッ!!
「申し訳ありませんが、あなたに関わっている時間が惜しいので」
ピーッ
蜜緒は口笛を吹いた。
すると、それが合図だったかのように狐が珠樹に群がり始めた。
今まで珠樹を遠巻きにしていたのも、蜜緒が相手をしていたからだろう。
「こいつら……邪魔だよ!!」
斬っても斬っても涌いてくる。
力では勝っているが、いかんせん数が多すぎる。
一体全部でどれくらいいるわけ!!?
こんな雑魚相手に!!
だが、そう思って敵が減るわけではない。
珠樹は刀を振るい続けた。