誠-巡る時、幕末の鐘-
「屯所にいるぜ。今、紫翠と千早と鷹がいるし、それに近藤達もな。だから大丈夫だ」
それに、と言葉を続けた。
「狐には借りがあってな。それを返しにきた」
「借り??何の??」
「……………秘密だ」
鈴はふっと笑った。
憂いを帯びているその顔は、普段の彼の表情と全く違う。
「おい、あいつに皆を止めるように言え」
鈴は蜜緒に時雨へ争いの終結を申し出るように促した。
庭では土方達が人に化けた狐達と、少し離れて彼方が時雨と刀を交えていた。
「…………し、時雨様……」
弱々しく蜜緒が時雨の名を呼ぶと、時雨はこちらを見上げてきた。
そして目をすうっと細くし、肩をすくめた。
「蜜緒、お前まで。………捕まったなら仕方ないさね。潔く死にな」
「っ!!!!」
蜜緒の瞳に大粒の涙が溢れている。
ガクリと膝をつき、俯いた。