誠-巡る時、幕末の鐘-



「貴様、どこまで冷酷かっ!!」




奏は怒りを顕にした。


奏は基本的に女・子供に甘い。


たとえ敵といえど、直接彼女に害されたわけではないので、特段彼女に敵がい心を抱くことはない。


むしろ、何故こんな男に従っているのか不思議なくらいだ。




「奏、こいつを見とけ。俺はあいつを殺る」




普段おちゃらけている鈴が誰かに対してここまで怒りを剥き出しにすることはない。


好戦的ではあるが、平和主義者でもある。


自分でそう自称しているくらいだ。


奏も刀を握りしめ、今にも屋根から時雨のいる場所まで行こうとしていたが、鈴のそれを見て踏みとどまった。




「分かった」


「待ってください!!どうか、命だけはっ」


「…………」




鈴は哀願する蜜緒を一瞥し、何も言わずに降りた。


蜜緒はその背を目で追った。



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