誠-巡る時、幕末の鐘-
「………どうして敵のはずの私にそんなに優しくして下さるんですか??私は時雨様にあぁ言われるまであなたを捕らえようとしていたし、あなたの兄君にだって……」
「何でだろうな。強いて言えば、勘だ」
「勘、ですか??」
蜜緒はフッと微笑んだ。
奏もそれを見て安心した。
「そう、笑ってる方がいい」
「本当に不思議な方」
蜜緒は持っていた刀をコロンと屋根の下に投げた。
刀を持つ奏と持たない蜜緒では明らかに奏に分がある。
つまり、これは恭順の意だ。
「どうかお願いいたします。時雨様を正規の手段で裁いて下さい。人間を殺めておいて虫がいいと思われるかもしれませんが、どうか……」
深く頭を下げた蜜緒に奏は頷いた。
「他の狐達は私が退かせます」
奏と蜜緒は屋根から降り、それぞれすべきことをすべく動いた。