誠-巡る時、幕末の鐘-



「終わらない……終わらせない。……まだだ!!」




鈴に手を押さえられていた時雨が鈴の手を振り払った。


油断していたのか、簡単にそれを許してしまった。




「まだ終わらない。元老院に仕える者など消えてしまえばいい!!」




時雨がそう叫ぶと同時に大量の狐火が顕れた。


今、庭を照らしている狐火とは比較にならない量だ。


それが一斉に屋敷に燃え移った。


木造の屋敷はすぐに火の手が回る。


あっという間に炎に包まれた。




「てめぇっ!!」




鈴と彼方が再び時雨を取り押さえた。




「奏が中に!!」


「今すぐ消しやがれ!!」


「誰が」


「おい、お前はなんとかできねぇのか!!?」




永倉が蜜緒の肩を揺さ振った。


頼みの綱は蜜緒だけだ。




「わ、私の力では時雨様の狐火を消すことは……」




青ざめた表情で首を振った。



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