誠-巡る時、幕末の鐘-
悪夢は現つとなる
―――屯所
「……………」
奏は温かい布団の中で目を覚ました。
頭がはっきりと冴えていないのかぼーっとしている。
「かなでっ!!かえってきた!!わたしのかん、はずれた!!」
幼い歓喜の声と共に、お腹に重みを感じた。
目線を天井から移すと、澪ちゃんの姿があった。
「澪ちゃん??何故ここに」
奏は体を起こした。
そして動きをピタッと止めた。
まるで見知らぬ部屋のように辺りをうかがっている。
だが、ここは奏の自室だ。
「かなで??どうしたの??ここ、かなでのへやだよ??」
「私の??覚えがないんですが」
澪ちゃんは瞳を大きく見開いた。
みるみるうちに歪ませ、とうとうボロボロと涙を流し始めた。
「としーっ!!かなでがーっ!!」
「わっ!!」
澪ちゃんが障子を開けて部屋を出ていく時に、響とぶつかった。
響は澪ちゃんが泣いているのを見て、奏に何かあったのかと思った。
だが、布団から上半身だけ起き上がっている奏の様子に変わった部分は見られない。