誠-巡る時、幕末の鐘-



「奏様!!」


「…………………爺??」


「はい。はい、そうです。奏様」




爺は深々と頭を下げた。




「爺、生きていたか。何千年ぶりか」


「奏様、二週間ぶりですよ」


「は??」




奏は爺の言葉に訝しげに眉をひそめた。


爺はこの状況の説明をなるだけ早く奏にすることにした。




「あなた様は今、記憶が三月あたりから抜け出ておられます」


「はい??」




奏はぐるっとみんなを見回した。


そして鈴と紫翠の姿を見つけると、瞳の輝きは強くなった。


枕元に置いてあった刀を手にとった。




「奏様、もうあの二人、風戸は敵ではありません。確執はなくなりました」


「………爺、知っていることを全部話して」


「分かりました。ここでは狭いので広間に行きましょう」


「……あぁ」




奏は起き上がり、爺の後についていった。


みんなも沈痛な面持ちでそれに続いた。



< 869 / 972 >

この作品をシェア

pagetop