誠-巡る時、幕末の鐘-



「……おいしい」


「レオンは何にでも一切妥協はしないからね。さ、お菓子も食べてみて??」


「…こっちもおいしいです〜ぅ!!!」




ふにゃっと笑う奏に潮は複雑そうに笑い返した。




「どうかしたんですか??」


「奏、もしだよ??ミエが記憶を失って君や僕達のこと忘れてしまったらどう思う??」




潮はゆっくりと言い含めるように言葉を紡いだ。


あまりの内容に、奏は食べる手を止めた。




「ミエ様が??忘れる??」


「そう。僕達のこと全て。楽しかったことも悲しかったことも嬉しかったことも全部」


「…………ずっと……ですか??」


「さぁ。分からない。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」


「………………」




嫌だ。


ミエ様に忘れられるなんて。


それくらいなら死んだ方がまし。




潮は黙りこんだ奏をじっと見つめていた。



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