誠-巡る時、幕末の鐘-
「………絶対嫌です」
「そう。嫌だよね??」
奏は服を握りしめて俯いた。
潮は手を伸ばし、ゆっくりと奏の頭を撫でた。
温かく、まるで女のように細い指。
だが、奏は違う手、もっと男らしい手を感じていた。
「そう思ってくれてる人達がいるんじゃないかな??君の場合でも」
「私に??ミエ様??」
「確かにミエも嫌だと言うだろうね。ローゼンクロイツ・天宮に連なる者も全て。ちなみに僕もだよ??」
でもね、と話を続ける。
奏は顔を上げた。
潮は優しく微笑みを浮かべていた。
「彼らもじゃないかな??君は確かに翁の帰還命令を無視し続けた。そこに君のどんな気持ちがあったか考えてごらん??」
「…………彼ら??私の………気持ち??」
潮は紅茶に口をつけた。
金毛九尾の狐の名に相応しい優雅な所作だ。