誠-巡る時、幕末の鐘-
「潮様、次の案件が上がってきました」
「分かった。すぐ行くよ」
潮の副官が呼びに来た。
なかなか帰らない上司を迎えに来たのだろう。
手にはたくさんの書類が握られていた。
「じゃあ、奏。よく考えてみて??」
「…………はい」
潮は立ち上がり、副官と共に第二課の舎館に戻っていった。
奏は目の前の湖をしばらく眺めていた。
「ミエ、何してるの??」
「う、潮ちゃん。け、剣の稽古!!」
茂みに隠れていたミエの存在に大分前から気付いていた。
だが、奏の目の前でその行動の理由は聞かずにいた。
「修練場ならあっちだよ」
「う、潮ちゃんの姿が見えて、何か持ってたから、お菓子だったら私も貰おうかなぁって思ったの!!」
焦って言う言葉ほど信憑性は皆無だ。
潮はやれやれと苦笑いをこぼし、副官も何とも言えない顔をしていた。