誠-巡る時、幕末の鐘-
―――市中
「桜花〜??」
奏は両腕を羽織の裾にいれ、下駄をカランコロンと響かせながら捜し回っていた。
行きそうな場所に行ってみるものの、どこもはずれであった。
「おっかし〜な〜??いつもは呼べば出てくるのに」
奏は首を傾げた。
あと桜花が行きそうな場所は……
「奏お姉ちゃん!!もう江戸から帰ってきたんだ!!?」
背後から少々上ずった声が聞こえてきた。
子供独特の高い声に、パタパタと小走りでかけてきた顔を見た。
「あ…あぁ。栄太か。昨日な」
栄太は寒いのか、頬を僅かに上気させている。
裾をしっかりと握り、奏の顔を見上げてくる栄太は満面の笑みを浮かべていた。
江戸に行っていたというのは、土方辺りがうまくごまかしていたのだろう。
奏はそれに便乗することにした。