誠-巡る時、幕末の鐘-



「…ちゃん。奏お姉ちゃん??」


「あ、あぁ、ごめん。考え事してた」




栄太が己の名を呼ぶのに、思考を戻された。




「僕達も行こう!!」


「いや、私は桜花を探すよ。こう寒いと適わん。栄太は元気だな」




奏は栄太の頭を優しく撫でた。


栄太もへへっと顔を緩ませた。




「子供は風の子だもん!!」


「そうか。さぁ、行っておいで。そろそろ響がおにぎりを作って持って行ってる頃だろう」


「本当!?じゃあ、また後でね!!」


「あぁ」




手を振りながら壬生寺の方へ駆けていく栄太に、軽く手を振り返した。


響のおにぎりはおいしいと、子供達の間でも大評判だ。


響もそれを聞いて、いつもニコニコ嬉しそうにしている。




「……寒くなってきたな。一度屯所に戻ってみるか」




奏は踵を返し、屯所に向かった。




それが後に、奏を大きく後悔させることになるとは知らずに。



< 902 / 972 >

この作品をシェア

pagetop