誠-巡る時、幕末の鐘-
「…ちゃん。奏お姉ちゃん??」
「あ、あぁ、ごめん。考え事してた」
栄太が己の名を呼ぶのに、思考を戻された。
「僕達も行こう!!」
「いや、私は桜花を探すよ。こう寒いと適わん。栄太は元気だな」
奏は栄太の頭を優しく撫でた。
栄太もへへっと顔を緩ませた。
「子供は風の子だもん!!」
「そうか。さぁ、行っておいで。そろそろ響がおにぎりを作って持って行ってる頃だろう」
「本当!?じゃあ、また後でね!!」
「あぁ」
手を振りながら壬生寺の方へ駆けていく栄太に、軽く手を振り返した。
響のおにぎりはおいしいと、子供達の間でも大評判だ。
響もそれを聞いて、いつもニコニコ嬉しそうにしている。
「……寒くなってきたな。一度屯所に戻ってみるか」
奏は踵を返し、屯所に向かった。
それが後に、奏を大きく後悔させることになるとは知らずに。