誠-巡る時、幕末の鐘-
―――屯所
やはり桜花は戻っていなかった。
「奏、寒いのか??」
「あぁ。桜花がいないから余計な」
奏が腕をさすっているのを見て、斎藤が半纏を差し出した。
暖かそうな綿入り半纏だ。
「ありがとう」
「あぁ」
「まだ戻ってこねーなんて珍しいな」
確かに、この時期、奏はいつも桜花を抱いている。
桜花もそれが分かっているかのように、奏の腕の中で丸まっている。
奏がいない十日間、桜花は所在なさげに庭をうろうろとしていた。
「大丈夫だって!!腹すかせりゃ帰ってくるさ」
「あぁ。そんなに気に病むことはない」
「そう………だな」
永倉が奏の背をバシバシと叩いた。
本人は慰めているつもりのようなので文句は言えないが……。
正直、わざとだったら倍にして返してやりたいくらい痛い。
なんとか堪えた。