誠-巡る時、幕末の鐘-



「桜花!!お前、体、透けてんじゃん!!」




先程までははっきりしていた姿がゆらりと揺れたかと思うと、ゆっくりと透け始めていた。


その姿に、みんなハッと息を呑んだ。




ニャー


チリン




首につけられた銀の鈴を鳴らし、塀に飛び乗った。




「あ、お待ち!!」




奏はすぐさま駆け寄ろうとした。


だが、それは新たな帰参者の第一声に阻まれた。




「奏!!桜花が!!」




珍しく息を切らした山崎だった。


桜花を塀の向こうで見つけたのを知らせるような表情ではない。


驚きと戸惑い、そして悲しみ。


それらがごちゃ混ぜになっている。




………………あぁ。


桜花、お前も私を……。



…………置いて逝くんだね??




奏は自分の足元が簡単に崩れ落ちていくのを感じた。



< 907 / 972 >

この作品をシェア

pagetop