誠-巡る時、幕末の鐘-
「酷いもんだったよ。逃げる猫を追いかけてバッサリさ。……悪かったの。見てることしかできんで」
「いや。爺さん、ありがとな」
もう少し若ければ、と首を振りながら、老人はその場を後にした。
「………長州……。そう、長人がやったの」
奏はゆらりと立ち上がった。
「奏ちゃん??」
「おい!!奏の前で話をするな!!」
鷹が凄い勢いで走ってきた。
かなり慌てている。
「あぁ、鷹か。見ろ。私の“大切な家族”の桜花が死んだ」
「お、おい」
「栄太や澪ちゃんには何て言おうかな??」
「俺が言ってやる!!だから……」
「そうか。なら任せたぞ??私は行かねばならぬ」
「待て!!」
鷹は奏の腕を掴んだ。
奏は鷹を一瞥した。
奏は力を失っており、今は自分の方が有利だというのに、鷹は底知れぬ恐怖を感じてしまった。
思わず腕を離してしまいそうになるのをなんとか堪える。