誠-巡る時、幕末の鐘-



「雷焔君、ソレは…」




響に聞いたのだろう、近藤や山南など屯所に残っていた者達もやってきた。


奏はフッと笑った。


だが、その瞳は仄暗い。


今までのどんな瞳よりも。




「……桜花ですよ。私の“大切な家族”である、ね?」


「一体………誰が……」


「長州の奴らだ」




土方達が屯所へ戻ってきた。


無言で桜花の背を撫でる奏の代わりに答える。


近藤達の顔も険しく変化していった。


すると、奏がさっと着物で桜花を隠した。


パタパタと走り寄ってくる音がして、皆はそちらに目をやった。




「……かなで!!おうかは!?」




斎藤と一緒に待っていたらしい澪ちゃんが、首を傾げて見上げてきた。


幼子らしい、愛くるしい姿だ。


斎藤は離れた所で沖田に説明を求めていた。


場の雰囲気からある程度は悟っていたのか、本人の気質ゆえか、澪ちゃんに気づかれるような表情は見せなかった。


ただ、そうか、と呟き、ギリッと拳を握った。



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