誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏、持ってきました」
「あぁ、ありがとう」
奏は布を受け取り、自室へ向かった。
澪ちゃんも珍しく答えが返ってこなかったので、不思議そうにその後をてくてくとついていく。
自室に着くと、奏はゆっくりと着物で隠した桜花を畳の上に下ろし、腰を下ろした。
「澪ちゃん、桜花に会いたいですか?」
「うん!!あいたい!!どこ?」
「もう少し待ってください。……あぁ、珠樹、お帰り。千早も一緒だったんだ」
「おかえり!!」
「ただいま」
「あぁ」
二人の視線は一度畳の上に置かれた着物に向いたが、すぐに外された。
おおかた誰かにもう話は聞いているのだろう。
まぁ、この二人なら聞くまでもないだろうが。
だが、澪ちゃんの前でする会話ではないと、二人共、口には出さないでいた。