誠-巡る時、幕末の鐘-



「少しの間、奥に行ってよう。大事な話があるみたいだから」


「………うん」




澪ちゃんは響に手を引かれ、部屋を静かに出ていった。


足音が聞こえなくなると、奏は桜花を着物から出した。




「………さぁ、桜花。体を綺麗に拭おうか」


「奏、僕がやろうか??」


「ううん。私が最後までやる」


「そう」




奏はゆっくりと濡れた布で血を拭き取り始めた。


みるみるうちに、布が赤く染まっていく。


とうとう、布本来の色がなくなってしまった。


その時、玄関の戸を勢いよく開ける音が聞こえた。


隊士達の慌てる声も同時に聞こえてくる。


ダダダッという廊下を走る音は奏の部屋の前で止まった。




「奏お姉ちゃん、桜花は!!?」


「あ、おい!!」


「栄太、待て!!」




永倉達の制止を振り払い、奏の元へ一目散に走り寄った。


不自然に置かれた着物に栄太の目が止まった。



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