誠-巡る時、幕末の鐘-
栄太はそのまましゃがみこみ、バッと手を伸ばした。
奏は黙ってそれを見ていた。
「………お、うか??」
「……………」
「……どうして………どうしてだよっ!!!」
栄太は桜花の体をかき抱いた。
大きな瞳からは涙がとめどなく溢れている。
山南が栄太の肩に優しく手を置いた。
「………どうしてだろうな」
奏は低く呟くと立ち上がった。
「鷹、ナルはどこだ??」
「……あいつなら今、薬草庫に籠もったままだ。記憶は無理でも、力なら取り戻すことができるかもしれない、とか言ってた」
「今すぐ連れてこい。桜花の傷が目につきすぎる」
「分かった」
鷹は夕陽が落ちた空に、翼をはためかせ、去っていった。