誠-巡る時、幕末の鐘-
「栄太、もう日が暮れた。家へ帰れ」
「………桜花のお墓を作るまでいる」
斎藤が帰宅を促したが、栄太は再び桜花の前に腰を下ろした。
足を折り曲げ、着物に顔を埋めてしまった。
こうなっては、てこでも動かない。
「失礼します」
穏やかな声が障子の向こうでした。
すっと静かに障子が開けられ、ナルが刀と小瓶を持って入ってきた。
その後ろには鷹もついてきている。
「奏……あの……」
「話なら後で聞く。先に桜花の傷をどうにかしてくれ。埋めてやる前に消してやりたい」
「分かりました」
ナルが桜花の前に座り、傷口に手を当てた。
ぽうっと淡い光がでてきて、桜花を包み込んだ。
ナルが再び手を退かすと、そこには生々しい傷は跡も残さず消えていた。