誠-巡る時、幕末の鐘-
「………桜花」
栄太が傷一つ無くなった桜花の体をそっと撫でた。
当然ながら二度と起き上がることはない。
それでも撫で続けた。
「…………栄太。いいか??」
奏は栄太の体を後ろから包み込んだ。
そして優しく語りかけた。
「桜花はもういない。だが、いつまでも泣いていると、いつまでたっても栄太のことが心配で極楽へ行けない。そして怖ーい奴らが桜花を苦しめるんだ。可哀相だろう??」
「………うん」
「死は誰にでも平等に訪れる。生きとし生けるもの全てだ。ほんの少しの間、そう、桜花は旅にでたと思えばいい」
「旅??」
「あぁ。旅の目的地は極楽だ。栄太も必ずそこへ行け。そしたらまた必ず会えるから」
「どうしたら行ける??」
「そうだな。小さきモノ達のことも考えられて、心優しい男になって、長生きしたら、かな??」
最後の長生きしたら、は奏の個人的な願いだ。
それでも納得したのか、栄太はしっかりと頷いた。