誠-巡る時、幕末の鐘-
「分かった。なる。絶対」
栄太はごしごしと涙を袖で拭った。
唇をきっと引き結び、桜花をしっかりと見つめた。
「よし、偉いな。さすが栄太だ」
奏は栄太の頭を撫でた後、ナルに向き直った。
「薬は??」
「ここに」
「今すぐ戻したいんだが即効性か??」
「もちろんです。修理に出していた刀も持ってきましたよ??」
ナルは持ってきた刀と小瓶を手渡した。
小瓶からはえもいわれぬ異臭が漂っている。
材料は考えないでおこう。
「お前にしては随分気のきく」
「それはあなたの部下ですから。ではもう戻りますね」
「あぁ。助かった」
ナルは軽く頭を下げ、部屋を出ていった。
「奏、お前……」
鷹は事ここにいたって今更止めることはできないと悟っていた。
しかし、それでも心配せずにはいられない。
たとえ、いつもこき使われようと、酷い扱いを受けようと同じ主に仕える仲間なのだ。
もし、暴走してしまったら、と気が気ではなかった。