誠-巡る時、幕末の鐘-



「鷹、結界を」


「あ、あぁ」




奏はこの寒空の中、半纏を脱ぎ、着流し姿で庭に出た。


風が冷たく吹きすさんでいる。




「おい、どこに行く??」




不審に思った土方が尋ねた。


当然だ。


今の季節に着流しだけで外に出ようものなら凍死してしまう。




「家の中でこの薬飲んで何も壊さない自信なんて、生憎持ち合わせていないんでね」




奏は小瓶の蓋を開けた。


すると、中から強烈な匂いが漂ってきた。




これで効果なかったら、どうしてくれようか。


材料間違ってないだろうな??


……………よし、仕方ない。




「鷹」


「おう。………いいぜ??」




鷹が手をかざすと、庭だけを覆った幕のようなものができた。


奏は意を決し、小瓶の中身を一気に飲み干した。



< 921 / 972 >

この作品をシェア

pagetop