誠-巡る時、幕末の鐘-
辺りがまるで朝日が昇ったように明るくなった。
そして、ピリピリという音が次第にバリバリという音に変わった。
「おい!!奏!!」
「…………」
珠樹も鷹に加勢に入った。
もう少しで破れる所であった結界が今一度結ばれ、鷹はほっと一安心した。
「あ〜。久しぶりのこの感じ。やっぱりこうでなくちゃ」
結界が内側から解かれた。
奏の周りにはまるで蛇のように雷が渦を巻いている。
先程のバリバリという音はこの音だ。
ようやく電流は煙のように消え、奏が中に戻ってきた。
「あぁ、寒い寒い」
奏は黒い打ち掛けを肩から羽織った。
金、銀の蝶が幽玄と飛びかっている。
奏のお気に入りの一品だ。
「………かなで。おうか、いるのにいない」
「………澪ちゃん」
奥から澪ちゃんが眉をひそめ、響とこちらへやってきた。