誠-巡る時、幕末の鐘-



奏はさっと居住まいを正した。


澪ちゃんの前に肩膝をつき、じっと見つめた。




「澪ちゃん…いえ、皇女様。空言を申しましたこと、ご容赦を」


「……わかりました。おうかは??」




奏の澪ちゃんに対する口調がさらに畏まった。


澪ちゃんも内親王の名に恥じない威厳を見せている。




「………こちらへ」


「…………」




澪ちゃんを部屋へ招き入れた。


澪ちゃんはきゅっと唇を引き結び、部屋の敷居をまたいだ。




「澪ちゃん。大丈夫??」




沖田が声をかけた。


栄太がそろりと顔を上げた。




「…………こちらです」


「………お、うか」




声が震え、目が潤った。


そして、ポタポタと涙が流れた。




「お、おうか〜ぁ」


「………うわ〜ぁんっ」




澪ちゃんが泣き出したのを見て、栄太もまた泣き出してしまった。


土方達はやるせない気持ちで一杯だった。



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