誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏。飯食わねぇのか??」
来て早々、隅で何かやり始めた奏に、永倉が声をかけた。
いつもなら、早くしねぇと食っちまうぞ、と言えるのだが、今言える雰囲気ではない。
「あぁ。私の分もどうぞ」
「そういうつもりで言ったんじゃねぇんだけど」
永倉はそう言いつつ、その言葉に甘えた。
原田や藤堂もそれに追随した。
「奏、何してるの??」
「これ??相手が誰だか分かんないから、調べようと思って」
「調べられるの??」
珠樹と沖田はさっさと食事を済ませ、奏の横へやってきた。
手元を興味深く観察している。
「………ほら、分かった。これは桜花の記憶だ。桜花は賢い。ちゃあんと見ている。……ちゃあんとな」
最後に付け加えられた言葉が、珠樹達にさえうすら寒く聞こえる。
奏の口端はゆるく上げられていた。