誠-巡る時、幕末の鐘-



月がサアッと雲で隠され、一時暗闇が広がった。


そして再び月が現れ、辺りはまた明るくなった。




「ん?」




桂は木の天辺に、何かが立っているのが見えた。


よく目を凝らすと、確かにそれは人影だ。




「おい、高杉!!」


「何だ」


「あそこを見ろ」




辺りを見回していた高杉に、桂は木の上を見るように促した。


五人全員の視線が高い木の天辺に向いた。




「あれは…」




肩から打ち掛けを羽織り、右に刀を持った人影があった。


顔は月を背にしているので、影になって分からない。


だが、長く美しい髪が風になびいている。




「そこから下りてこい!!」


「貴様、女か!?」


「だったら?何?」




人影…奏は目を細めた。


そして、ふわりとまるで翼があるかのように舞い降りた。



< 932 / 972 >

この作品をシェア

pagetop