誠-巡る時、幕末の鐘-
月がサアッと雲で隠され、一時暗闇が広がった。
そして再び月が現れ、辺りはまた明るくなった。
「ん?」
桂は木の天辺に、何かが立っているのが見えた。
よく目を凝らすと、確かにそれは人影だ。
「おい、高杉!!」
「何だ」
「あそこを見ろ」
辺りを見回していた高杉に、桂は木の上を見るように促した。
五人全員の視線が高い木の天辺に向いた。
「あれは…」
肩から打ち掛けを羽織り、右に刀を持った人影があった。
顔は月を背にしているので、影になって分からない。
だが、長く美しい髪が風になびいている。
「そこから下りてこい!!」
「貴様、女か!?」
「だったら?何?」
人影…奏は目を細めた。
そして、ふわりとまるで翼があるかのように舞い降りた。