誠-巡る時、幕末の鐘-



月の光を背にして立つ姿は、まるで昔話のとある姫君を彷彿とさせた。


ただし手に持つものは緋扇ではなく、自分達と同じ刀ではあるが。




「お前は……あの時の……」




桂は顔に見覚えがあった。




「知っているのか??」


「あぁ。だが何故……」




桂は解せなかった。




何故ここにあの時の鬼がいて、今こうして対峙している??


双子共々、人間には興味がなかったはずだ。


新撰組の者を斬ったという話も聞かないので、報復に来たというわけでもないはず。




桂の心中に様々な憶測が飛びかった。




「………あぁ、分かった。お前、桂小五郎か。そっちは高杉晋作」


「お前、何故俺の名を…」




高杉は奏が自分の名を知っているのを知り、少なからず動揺した。


奏は至極当たり前という風に、泰然と構えた。



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