誠-巡る時、幕末の鐘-
「人間社会??桂、どういうことだ??」
奏の言葉の一部にひっかかりを感じ、高杉は桂に尋ねた。
「………あの女は……鬼だ」
「鬼だと!?そんな馬鹿な」
「鬼でもなかったら、あんな高い木から音一つせず無傷で下りられるはずないだろうが」
高杉は目を目一杯見開き、奏を凝視した。
桂もいつもの冷静さが失われるのも時間の問題だった。
「お前達が死にゆく理由。それはただ一つ。家族の仇だからだ」
「家族??」
人間に鬼を殺すのは難しい。
こちらも相当な傷を負っているはずだ。
しかし、三人にはそれがない。
桂と高杉はますます思考の波にのまれていった。
「………まさか。…あの猫か!?」
高杉がはっとした表情で男の持つ刀を見た。
奏は目を細め、ほぅっとため息をもらした。