誠-巡る時、幕末の鐘-



「さすが松下村塾の双璧の片割れ。頭の回転は悪くないようだな」


「何故猫ごときで死なねばならん!!」


「馬鹿!!よせっ!!」




奏の目がキラリと瞬いた。


刀をすらりと抜き、次の瞬間には男の喉元にあてていた。




「ひっ!!」


「田村!!」


「猫“ごとき”??では人間“ごとき”に対して情けをかける必要もないということか」




奏はぐっと刀を近付けた。

つうっと赤い線が走り、一筋赤い雫が流れた。


クスクスと薄笑いを浮かべながら行われるその行為に、桂達は恐れおののいた。




「まぁ、情けをかけるもなにも、生かしてここから帰すわけはないから別に構いはしないが。…さぁ、誰からこの世に別れを告げる??」




男から刀を離し、間合いを十分にとった。


剣先についた血をペロリと舐めた。


妖艶に笑うその姿は、まさしく鬼の名に相応しい。



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