誠-巡る時、幕末の鐘-
「辞世の句…だったか。それくらいは作らせてやろう。鬼は道理は守る。武士はそれを作って死ぬものなんだろう??………まぁ、お前達が武士といえるかどうかは甚だ疑問だがな」
「まだ死んでたまるか!!」
「俺達にはやるべき仕事がたくさんあるんだ!!」
「知ったことか。別にお前達の代わりなど誰でもできる」
奏は聞く耳を持たなかった。
常には抑えられている冷酷な物言いも、存分に発揮されている。
「奏!!見つけた!!」
奏が視線を横にちらりと向けると、珠樹や鷹、土方達がこちらへ走ってきていた。
だが、近づくことは叶わない。
刀の腕は珠樹が上でも、通力の方では奏の方が勝っていた。
今、ここ一帯には奏によって結界が張られている。
本来ならば中が見れなくなるはずの結界も、珠樹の力によって中の様子がようやく見える程度だ。
それは鷹も同じこと。
ましてや人間である土方達に、なす術は何もなかった。