誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏、ここ緩めて」
「それはできないよ。だって逃げられてしまうもの」
奏はゆるゆると首を振った。
奏が結界を緩めない以上、出ることはもちろん、入ることさえ許されない。
今、この場での絶対的支配者は奏だ。
「こいつらのせいで桜花は死んだ。なのに自分達はやらなければならないことがある??勘違いも甚だしい」
奏は刀を収め、再び木の枝へと跳躍した。
男達は張り詰めていた緊張の糸をわずかにでも緩めてしまった。
「そもそも、お前達は国のため国のためというが本当にそうなのか??」
「当たり前だ」
「みなが平等でありたいと??」
「そうならなければならないはずだ」
「…………“正義”という名分に踊らされた人間の末路か」
片膝を立て、ゆるゆると唇を上げた。
土方達は未だ、奏が何をしたいのかが掴めないでいた。