誠-巡る時、幕末の鐘-
そして男達の前に跳躍しようとした瞬間、奏と男達の間に人影が割り込んだ。
「奏様。このような輩、奏様が相手をなさる必要はありません」
「爺、そこをどいて」
爺が久々に奏の前に顔を見せた。
こちらに静かに歩みよってくる。
「なりません。ここは心中を安からに。彼らがやるそうですから」
爺の言葉に奏が一瞬躊躇した。
…………その刹那。
「爺、奏も。………甘いんだよ」
「……っ!!」
爺がハッと振り向いた瞬間、闇を斬りさかんばかりの早さで刀が凪ぎ払われた。
白刃が月の光によって煌めきを帯びている。
ドサドサドサっと男達の体が雪の上に倒れた。
じんわりと、紅い花びらを散らしたかのように染み渡る血の色。
それを斬った本人、彼方は口元に笑みをたたえて満足げに見ていた。