誠-巡る時、幕末の鐘-



「ここで君ら二人が彼らに捕まってもらっちゃ困るからね」




彼方はパチりと指を鳴らした。


すると、スウッと暗闇の続く穴のようなモノができた。


そして、男達を手早くその穴に放った。




「さ、藩邸に落としたから。そこから急いで出ていって」




彼方が作り出していた穴を閉じると、すっと一方を指差した。




「もたもたしないでよ。そんなに走るのが嫌なら彼らと同じようにしてあげてもいいよ??」




それはもちろん自分達も殺されることを意味する。


ここで殺されるわけにはいかない。


桂と高杉はぐっと堪え、言われた通りすり抜けて行った。




嫌。


自分でも分からないこの感情が。


嬉しい??


悲しい??


腹立たしい??


こんな状況、許せない。




奏は初めてみた兄の冷血な一面に、男達が死んだということよりも衝撃を受けていた。



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