誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏が呑気にしゃべってるから。あんなに憎いならすぐに殺せばいいのに」
誰??
目の前のモノは。
知らない。
こんな兄様、私は知らない。
「見てて焦れったくなったんだ。いつまで経っても殺らないから」
そう言って、優雅に笑う横顔。
奏は何かを掴みかけた。
すんでのところでそれは空中に霧散していく。
何??
あと少し、あと少しなのに……。
鍵が足りない。
何か重要な鍵が。
奏の気が乱れたために、結界はほころびを大きくした。
そしてその脆くなった所を珠樹と鷹が壊した。
爺や彼方が結界の中に入ってこれたのは、ひとえに彼らの通力が強いからだ。
今まで外にいるしかできなかった珠樹達が駆け寄ってきた。
「………奏からさっさと離れてよ」
土方達にすら聞かせたことのないい憎悪の籠もった声を、珠樹は彼方に浴びせかけた。